実況アナの自慰的コラム

好きなときに、好きなことを書きます。

「俺、國學院の試合を喋ったよ」

いつかは、とは思っていました。

ただ、こんなにも早く実現するとは。

 

 

2021年6月10日

第70回全日本大学野球選手権記念大会 準々決勝 第4試合

國學院大學 対 福岡大学

解説:井端弘和さん

リポート:羽村亜美さん

実況:足立清紀

 

 

國學院の野球部の門を叩き、何もできず、逃げ出してから12年。

野球選手になるという夢が潰えてから12年。

たまプラーザのグラウンドで死んだ「野球選手の私」の亡霊は、遠く離れた大学野球の聖地・神宮で遂に成仏し、選手たちの歓喜と溜息と共に夜空に溶けていきました。

 

※詳しい事情については以下をご参照ください。

國學院大學の優勝に思いを馳せる➀ - 実況アナの自慰的コラム (hatenablog.com)

國學院大學の優勝に思いを馳せる② - 実況アナの自慰的コラム (hatenablog.com)

國學院大學の優勝に思いを馳せる③ - 実況アナの自慰的コラム (hatenablog.com)

 

 

試合が始まるまで、

 

「あのときの皆は俺の実況を聴いてくれるだろうか」

「出演者の名前を見て、俺のことを思い出すだろうか」

「いつも以上に上手くやってやるんだ」

「変な失敗なんかしたら、目も当てられないぞ」

 

いろんなことを考えました。

実況担当として決して良いことではないと思いながら、それを拭い去れずにいました。

本当にいろんなことを考えて、いろんなことを思い出しました。

しかし、プレイボールがかかってすぐ、私の下らぬ雑念は一瞬にして吹き飛ばされてしまいました。

 

國學院大學福岡大学が繰り広げる白熱した試合展開。

拙攻、拙策が招くロースコアではない、正真正銘の投手戦。

両チームの選手たちが魅せる充実した表情。

張り詰めた空気。

乾いた打球音。

歓声と悲鳴。

笑顔。

涙。

 

試合は延長10回タイブレークの末、2対1で福岡大学がサヨナラ勝ちを収めました。

公益財団法人 全日本大学野球連盟 (jubf.net)

午後6時56分に動き出した白球が、その足を止めたのは午後9時50分。

この長く濃密な時間の中に、私の思いや事情などが入り込む余地は一切ありませんでした。

私はただ、目の前で起きていることを伝えるだけ。

それで十分でした。

(本来、実況とはそういうものなのかもしれませんが。)

 

 

帰り道、銀座線に揺られながら、私は初めて両親に仕事の報告をしました。

 

「俺、國學院の試合を喋ったよ」

 

すると、

 

「あの時の清紀に言ってあげたいね」

 

と返ってきました。

お母さん、あの時の俺はついさっき成仏したから、もういないのです。

でも、もし伝えることが出来たら、彼(私)は何と言うのでしょうか。

 

「えー。実況アナウンサーなんかやってんのかよー。」

 

とか言ってくるんでしょうか。

そしたら殴ります。

昔と違って、今の私はボクシングをやっていますので。

 

 

2021年6月10日は、私にとって忘れられない日になりました。

かつての夢が死に、新たな夢が叶った日です。

自分の中で大切にしていきたいと思います。

ちなみに、次の夢はまだ決まっていません。

ただ、もし未来の自分がやって来て「夢が叶ったぞ」と言われた時には、

 

「えー。まだ実況アナウンサーなんかやってんのかよー。」

 

と言い返すことができたら良いな、と思っています。

その時まで、引き続き頑張ります。